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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)7416号 判決 1970年1月31日

原告 若林厚右

右訴訟代理人弁護士 橋本敦

同 岡村渥子

被告 沢田トメギク

<ほか三名>

右被告ら訴訟代理人弁護士 田上義智

同 西田温彦

同 滝瀬英昭

主文

被告らは各自原告に対して、昭和四三年五月一日から昭和四四年一一月三〇日にいたるまで、月五、〇六〇円の割合による金員を支払え。

原告の被告らに対するその余の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決は原告勝訴部分にかぎり、

仮りに執行することができる。

事実

一  当事者の求める裁判

(原告)

被告沢田トメギク、沢田静子、沢田末蔵は原告に対して、別紙目録記載の土地を明渡せ。

被告中沢は原告に対して、別紙目録記載の家屋を収去して同目録記載の土地を明渡せ。

被告らは各自原告に対して、昭和四三年五月一日から右明渡しずみにいたるまで、月五、〇六〇円の割合による金員を支払え。

との判決およびこれに対する仮執行の宣言。

(被告ら)

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二  事実関係

(請求原因)

(一)  原告の先代若林剛はその所有にかかる別紙目録記載の土地(以下、本件土地という。)を昭和一六年一一月二五日被告沢田らの先代沢田高雄に賃貸したところ、原告の先代若林剛は昭和一九年一二月六日死亡し、原告が家督相続により本件土地の所有権を取得するに伴い、その賃貸人たる地位をも承継した。

そして、その賃料は昭和四三年三月三一日まで月四、〇四八円であったところ、被告沢田らの先代沢田高雄は同年三月に死亡し、同被告らがその賃借人の地位を相続した。原告は被告沢田らと合意のうえその賃料を同年四月一日から月五、〇六〇円に増額したところ、被告沢田らは同年五月一日以降の賃料について履行期を経過した。

(二)  ところが、被告沢田らの先代沢田高雄は本件土地をその時期は不明であるが被告中沢に転貸し、同被告は別紙目録記載の家屋(以下、本件家屋という)を所有し、その敷地として本件土地を占有している。

よって、原告は被告沢田らに対して、昭和四三年一二月一八日到達の本訴状により、右転貸を理由として本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をなした。

(三)  右解除の意思表示によって本件賃貸借契約は終了したところ、本件土地に対する賃料相当損害金は賃料と同額の月五、〇六〇円である。

(四)  よって、原告は被告らに対して、原告の求める裁判部分記載のとおりの本件家屋収去・本件土地明渡しと賃料および賃料相当損害金の支払を求める。

(請求原因に対する被告らの認否)

賃料額が増額されたことを除き、その余の請求原因事実を認める。賃料額が原告主張のとおり増額されたことは否認する。

(抗弁)

(一)  被告中沢は昭和一六年一二月一日被告沢田らの先代沢田高雄から本件家屋を買い受け、それに伴い本件土地の転貸を受けたものであるところ、原告の先代若林剛はそのころ右転貸を承諾し、そのごは被告中沢においてその名義で直接原告に本件土地の賃料を支払ってきた。

(二)  したがって、右転貸は原告の先代若林剛の承諾を得たもので、原告に対抗することができるから、原告のなした本件賃貸借契約の解除はその要件を欠き、その効力を生じないものというべく、よって原告の本訴請求は棄却すべきである。

(抗弁に対する原告の認否)

抗弁事実を否認する。

三 証拠関係≪省略≫

理由

一  賃料額が増額されたことを除き、その余の請求原因事実については当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によると原告主張のとおり賃料が増額されたことが認められる。

二  そこで、被告中沢が本件土地の転貸を受けるについて、原告の先代若林剛の承諾を得たか否かについて判断する。

≪証拠省略≫を総合すると、被告らの主張するとおり原告の先代若林剛は被告中沢が本件土地の転貸を受けたのを承諾していたことが認められ、≪証拠省略≫によるも右認定を左右するに足りない。

そして、右認定事実によると、被告中沢が本件土地の転貸を受けるについては、原告の先代若林剛の承諾があったのであるから、右転貸は適法なものであり、被告中沢も右転借をもって原告に対抗することができるのである。

そうすると、その余の点について判断するまでもなく原告の本訴請求は昭和四三年五月一日から同年一二月一八日までの月五、〇六〇円の割合による賃料の支払を求める限度において理由があるにすぎず、その余は理由がないから棄却すべきである。

三  しかし、原告の賃料相当損害金の支払を求める請求のなかには、本件賃貸借契約の解除が効力を生ぜず、したがって賃料相当損害金の支払を求める請求が棄却された場合においても、本件口頭弁論終結時までに履行期の到来している賃料の支払を求める意思が含まれているものと解するのが相当である。

そして、被告らにおいて昭和四三年一二月一九日から昭和四四年一一月三〇日までの月五、〇六〇円の割合による賃料について履行期を経過していることは当事者間に争いがないから、右の限度における賃料の支払を求める請求は理由がある。

四  してみると、原告の本訴請求は右の限度における昭和四三年五月一日から昭和四四年一一月三〇日までの賃料の支払を求める部分にかぎり理由があるから認容し、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法九二条但書、八九条、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 中山博泰)

<以下省略>

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